労働者の派遣を受けるとき「紹介予定派遣」の利用が考えられます。紹介予定派遣を受けると自社に適性のある労働者とマッチングしやすいメリットがあります。
通常の労働者派遣と有料職業紹介の中間的な制度ですが、通常の派遣業や有料職業紹介と、どのような違いがあるのでしょうか?
紹介予定派遣とは、派遣元の事業主が、派遣先に労働者を紹介する前提で行われる労働者派遣です。つまり、将来雇い入れたい労働者を試しに派遣してもらい、気に入ったら直接雇用に切り替えて雇用することができるのです。
紹介予定派遣は、通常の労働者派遣と人材紹介の両方の特徴を併せ持つ制度なので、紹介予定派遣を行う業者は「派遣業」の許可をとともに「職業紹介事業」の許可や届出の手続きもしています。
また、近い将来での派遣先企業での採用を前提とするので、派遣労働期間は最長6か月に制限されます
紹介予定派遣では、通常の労働者派遣で禁止されていることが一部許されます。たとえば労働者と派遣先の事前面接を行ったり履歴書を送付したりして、派遣先が労働者を選定することが可能です。このように、派遣労働者を受け入れる前に選定できるのは紹介予定派遣ならではのメリットです。
また、紹介予定派遣を利用すると、派遣先会社は期間中に、労働者の能力や自社への適性を判断できます。労働者の側も、派遣先の環境や労働条件、業務内容などを見極めて、自分に合っているかどうか判断できます。これらにより、お互いにマッチする職場・労働者を選ぶことができるのです。
当初は紹介予定派遣ではなく通常の派遣として就業した場合であっても、派遣先と労働者の双方に希望があれば、派遣先と労働者が直接雇用契約を締結することが認められます。この場合、直接雇用することになった時点で、もともとの派遣契約を変更して「紹介予定派遣」に必要な要件を整える必要があります。
紹介予定派遣は、いわゆる「試用期間」とは異なります。
試用期間は、雇用契約を締結する前提として事業者が労働者を試験的に採用することですが、その場合には、客観的に合理的な理由がない限り、事業者が本採用を拒否することができないと考えられています。多くの場合、気に入らなくても雇用しなければなりません。
これに対し紹介予定派遣の場合には、より広く本採用を拒否することができるので、受け入れ先の企業にとっては利用しやすいです。たとえば「本当に雇うかどうかわからないけれど、一度試してみたい」というケースでは、自車で試用期間を設けるよりも紹介予定派遣を利用する方がお勧めです。
紹介予定派遣では、派遣先と派遣元が労働者を特定することができますが、労働条件についてまで自由に決められるわけではありません。以下のような規制が及びます。
まず、紹介予定派遣の派遣期間は、6か月を超えられません。
また、派遣先は、紹介を受ける労働者を特定する際、年齢や性別などによる差別をしてはいけません。
さらに労働者に対し、事前に「就業条件明示書」を交付して、以下の事項を告知しなければなりません。
紹介予定派遣であること
紹介後に派遣先が本採用する場合の予定労働条件
紹介予定派遣の派遣先が、紹介を希望しなかった場合や本採用しなかった場合、労働者に希望があれば、理由を明示すること
紹介予定派遣後に派遣先が雇用する場合の年次有給休暇や退職金の取扱い。派遣期間を勤務期間に含めるかどうかについて
紹介予定派遣を利用するときには、派遣元と協議をして上記のような条件について取り決めをしておく必要があります。
紹介予定派遣を利用しても、派遣先が紹介を希望しないケースがあります。
その場合には、派遣先企業は派遣元に対し、不採用の理由を書面やFAX、メールによって明示する必要があります。また、派遣元の事業者は、労働者の希望があれば、派遣先から明らかにされた不採用の理由を明示しなければなりません。
派遣先が紹介予定派遣の労働者を不採用にした場合、その理由が年齢や性別などの不当な理由にもとづくケースも考えられます。
本来こういった理由での不採用は認められないのですが、こういったケースでも、派遣先に労働者を採用する義務までは発生しません。強制的に気に入らない労働者を雇い入れる必要はないのです。
ただし、不当な理由にもとづく不採用決定は「不法行為」となりますので、労働者は派遣先に対して慰謝料請求などを行うことができます。
紹介予定派遣を受け入れる場合、差別的な不採用を行わないように注意した方が良いでしょう。
以上が紹介予定派遣の概要とポイントです。これから人材派遣や紹介を受けるときの参考にしてみてください。